東京フィルハーモニー交響楽団の首席ホルン奏者で、三芳町ふるさと大使の髙橋臣宜さん。
以前ご紹介した「オーケストラの裏側ツアー」が好評をいただいており、髙橋さんから第3弾が届きましたので、以下の通りご紹介します。
第3弾は、「プロのオーケストラ奏者になるにはどうすればいいの?音楽学校編」です。
入団オーディションの前段階として、私たちプロの音楽家は、継続的な事でもありますが、「音楽」に関係する様々な事を勉強しなければなりません。
楽譜に書いてある音符を正確に演奏するための練習だけに、たくさんの時間を費やしている訳ではなく、もちろん、曲の練習には膨大な時間を費やしますが、同じぐらいの時間を、「楽譜の裏側に書いてあるモノ」を読み取るべく、勉強しています。
たとえば「和声」。ハーモニーの組み合わせや進行の事を言います。
音楽は、ハーモニーの上にメロディがリズムと音程を伴って成り立ってますが、ド・ミ・ソのハーモニーが、どういう風に次のハーモニーに移り変わって音楽が流れて行くのか、実は決まり事の上に成り立っていて、感覚だけで作曲者は書いている訳ではないのです!
こういう様々な「音楽の基礎」を勉強する場所が今回の裏側ツアーのテーマ、「音楽学校」です。
「音楽学校」と一口に言いましても多種多様ありまして、いわゆる音楽大学、音楽の専門学校、教育大学含む一般大学の音楽専攻などです。
どこがよい、悪いはありません。どこの学校でも必要な音楽の基礎を勉強できます。
ですが、個々の学校でのカリキュラムが異なります。
教育系の学校でしたら教育中心の勉強になりますし、専門学校でしたら、演奏するという事に重点を置いた学校になります。
自分が何の勉強に重点を置くのか、という意志が選択の基準になります。
私は東京芸大を卒業しておりますが、音楽大学は、専攻の演奏技術のレッスンはもちろんの事、先ほども触れましたが、和声学、ソルフェージュ、室内楽、オーケストラ、私の様に管楽器専攻ですと吹奏楽、副科としてピアノ、声楽、もちろん語学やマネージメント論など一般教養科目も履修しなければなりません。
音楽全般を幅広く総合的に学びつつ、それを活かすテクニックを学ぶ事ができます。
とりわけ、「演奏する」という事の裏側にある、和声学やソルフェージュはかなり重点を置かれます。ソルフェージュというのは、西洋音楽において、簡単に言えば「楽譜の読み方、音楽理論の基礎を身に付け、音楽能力を向上させる訓練」の事を言います。
これは本当に本当に大切な訓練で、これが未熟であったり、適当に流したりすると、たとえば他の奏者とアンサンブルを行う場合、アンサンブルがまったく上手くいかなかったり、最悪の場合、演奏能力を疑われる事になりかねません。
余談ですが、私は小さい頃からクラシック音楽に慣れ親しんだ訳ではなく、専門の教育を受け始めたのは、プロのオーケストラ奏者を目指し始めた中学2〜3年生からでしたので、このソルフェージュ科目は苦労しました。
一般的に小さい頃から始めた方が有利と言われてはおりますが、私の様に始めた年齢が遅くてもその後の努力次第で追い付く事は全然可能です。その代わり苦労します!笑
私の場合、小さい頃からピアノを習っていた訳ではないので、まず絶対音感 (☆音の高さを瞬時に理解できる能力) がありません。今でもありません。
まったくの無からのスタートでしたので、中学、高校と師事させて頂いたソルフェージュの恩師にはレッスンの度にご迷惑をおかけした事と思います。
年齢が上がってからでは習得が難しいとされる絶対音感ではなく、今思い返せば、相対音感 (☆基準になる音と別の音がどれぐらい離れているか認識する能力) の訓練を徹底的にして頂きました。
ちなみに、芸大時代のソルフェージュの教官は鬼教官でした…。授業に行きたくなかったです。笑
徹底的なご指導を受け、今では演奏に際して本当に「演奏に繋がっている」と実感できますし、感謝しかありません。
たまに仕事現場でもお会いします。やはり、緊張してしまいます…笑
音楽学校は周囲に自分の専攻楽器以外のプロを目指す「仲間」がたくさんいるという事も大切な要素です。
違う楽器や専攻生から大いに刺激を受ける事もありますし、同じ所、同じ栄光を目指す者同士、苦楽を共有できる一生の仲間に出会えます。
こういう経験はオンラインの画面の中では絶対に経験できません。
辛いコロナ禍の時代ですが、仲間と会って、一緒に話をして、食事をして、時には言い合いをして、そういう人間経験みたいなものを通しても音楽の能力は向上していきます。
学生からプロになり、仕事現場で学生時代からの仲間に会うといつもホッとします。
砂漠でオアシスを見つけた様な気分でしょうか、音楽をやっていて良かったな、なんて思う事もたくさんあります。
これからプロを目指す皆さんは、何事に取り組むでも遅いという事は絶対にありません。
やってみよう!と思ったその瞬間がスタートです。
これから志す皆さん、たくさん勉強し、経験し…
プロのオーケストラの現場でお会いしましょう!
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