平成12年4月に地方分権一括法、実際には地方分権に関係する475本の関連法案からなっている法律が施行されました。この法律により、国の機関委任事務制度が廃止され、国と地方の関係は従来の上下・主従から対等・平等に変わり、自治体は自己決定・自己責任による自主・自立的な運営を求められることになりました。
住民に深く関わることは、住民に身近な自治体が決定するということであり、その決定への住民の参画と責任がより強く求められることになりました。そして、自治体の基本構造のあり方や住民参加のあり方も自らルール化する必要が出てきたのです。そうして誕生したのがいわゆる「自治基本条例」でした。
すでに現在、全国で200以上の自治体が自治基本条例を制定しています。
当町でも住民に関わる条例として、平成20年に「協働のまちづくり条例」が制定され、住民自治の充実を目指した取り組みが行われています。
また、平成22年には、議会の基本ルールを定める議会基本条例が制定されています。自治基本条例とのかかわりが大きいため、条例の内容を分析し、自治基本条例との関係性を整理していく必要があります。
全国的に住民自治の充実が進められている状況を踏まえて、当町でも住民に関わる決定事項について住民が参画するためのルールの整備や、住民や行政の責任と権利を明確にしておく必要があります。
プロジェクトチームでは、全国の先進自治体を研究し、その中で特徴のある3つの自治体を選んで研究してきました。
研究結果を踏まえて県内の北本市をプロジェクトメンバーが訪問し、役所の事務局の方と市民の代表の方からご意見を伺いました。
それぞれの自治体で自治基本条例の構成や内容には違いがあり、地域の特性が反映していることがわかりました。北本市の視察では、多くの住民に参画してもらうには、策定に十分な時間が必要であること、また、条例ができたから何かが急に変わるわけではなく、これから変えていくための条例であるという担当者の発言が印象的でした。
研究対象とした自治体の基本条例では、次の事項を共通に掲げている。
次にプロジェクトチームでは、当町の既存条例との関連を研究しました。自治基本条例とかかわりがある「議会基本条例」「協働のまちづくり条例」「情報公開条例」との関係や整合性について検討しています。
議会基本条例は、平成18年、全国で初めて北海道栗山町で制定されました。現在までに200を超える自治体で制定されています。当町では平成22年に制定されました。全国的には、自治基本条例と議会基本条例はセットになっているわけではなく、栗山町は自治基本条例を制定していません。研究対象にした自治体の中でも、議会基本条例を制定しているのは多治見市だけです。議会基本条例を制定していない自治体では、自治基本条例の中で議会の責務と役割など関連する条項を詳しく規定しているものがあります。いずれにしてもプロジェクトチームでは自治基本条例と議会基本条例は相反するものではなく、相互補完しながら住民福祉を向上し、豊かなまちづくりするための条例だと考えます。したがって、今後、自治基本条例を策定する場合、議会に関する内容を盛り込むのであれば、議会基本条例との関係に配慮する必要があります。
平成18年に公募で選ばれた9人の住民を中心に設置された「協働のまちづくり研究会」が1年間にわたり研究し「総合計画の施策、事業を一定のルールのもとに協働実践するためのルールづくり」を提案しました。この報告書では、協働実践を優先し、自治基本条例については、次のステップとして検討するとしています。
この提案を受けて、町は協働のまちづくりを推進する組織として「三芳町行政改革・協働推進本部」を設置しました。その後、協働のまちづくりのルールを明確にするための条例が検討され、平成20年に「協働のまちづくり条例」が制定されています。自治基本条例の理念からしますと協働のまちづくり条例に規定されている内容の多くは、一般的に自治基本条例に盛り込まれるものと重なっています。策定過程では十分な分析、検討が必要です。
住民と行政、議会との情報の共有化は自治基本条例の基盤をなすものですので、情報の共有化をどの様に進めるか、住民への説明責任など実際の運用に関して検討する必要があります。
以上のような検討を踏まえ、三芳町で自治基本条例を制定する場合に何をしなければならないかなどについて提言します。
自分たちが住んでいるまちをどのような町にしていきたいか、どのように変えていくかということです。
「三芳町民憲章」「協働のまちづくり条例前文」では町の特色、まちのすがたがうたわれています。始めに自分たちが住むまちのことをよく理解し、共通認識を持ち、どのようなまちにしたいのかということが、三芳町の特色に繋がります。
多くの住民が策定過程に参加することは自治基本条例の理念そのものであり、多くの住民が参加することで、何が変わっていくのかを実際に体験することができます。
自治基本条例は、制定することが目的ではなく、制定後、その条例に基づいて住民自治を広げ、住民主権が実現されることが重要であるので策定過程には十分時間をかけて多くの住民の意見が反映されるようにする必要があります。
策定過程に多くの住民が参加し、多くの役場職員など関係者が関わることで、制定過程を通じて自治基本条例を理解することができます。また、それによって制定後の円滑な運用が可能になります。
策定に着手する前に予め策定工程表を作成し、住民や関係者に開示することを提案します。それにより、関係者が策定にどのように参画できるかが明確になります。特に参考にした先進自治体では策定には2年から3年をかけています。準備段階で住民など関係者に必要性や意義、町の課題などについて共通認識と情報の共有化を図ります。実際の策定でも、関係者との意見交換などを実施し、理解を深めていくことが重要となります。
住民への周知や策定作業が長期間にわたることから、役場内に事務局を設置する必要があります。組織体制をしっかり構築することはとても重要です。
まず用語の定義をする必要があります。一番の問題は住民の定義です。地方自治法では、住民は区域内に住所を有する者です。自治基本条例は住民の行政などへの参加のルールを決める条例ですが、その住民の対象範囲をどうするか。「協働のまちづくり条例」の住民は、通勤、通学者も含んでいます。ニセコ町は、選挙権のない20歳未満の町民のまちづくりへの参加を規定しています。
三芳町の独自性を条例の中にどのように活かしていくか。そのためには町の大きな方向性を示す必要があります。例えば、協働のまちづくり条例にある「町政について学ぶ権利」などは他の自治体の条例にはない珍しいものです。
一般的には「自治基本条例」、ほかに「まちづくり基本条例」「市政基本条例」などがあり、条例の名称が他の条例との関係、住民との関連を表すので、条例の方向付けの段階で議論をすればよいと思います。
自治基本条例では、地方自治法のリコールに伴う住民投票の規定や、公職選挙法の規定を越えて踏み込むような事例はあまりありません。ただし、三鷹市では住民投票の請求権を18歳以上としていますし、常設型の住民投票条例を持つ愛知県高浜市では、投票権を永住外国人も含む18歳以上に与えています。三芳町の現状と照らし合わせ、どこまでの規定が必要か、必要でないか見極めていく必要があります。なお、住民投票の法制化については、現在、国の地方制度調査会でも検討が行われていますのでその経過も見守ることが必要です。
住民自治や住民主権を実効あるものにしていくため、先進事例でもコミュニティ活動を重視し、その活性化を進めているところが多くあります。当町でも、行政連絡区では高層住宅や自治会役員の高齢化など多くの問題を抱えており、今後、行政連絡区の役割、位置づけなども含め、広い意味のコミュニティ活動の充実に向けて取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
自治基本条例は通常、その自治体の「最高規範」に位置づけられるため、他の条例・規則や制度は、自治基本条例に則ったものにしていかなければなりません。三芳町の場合、特に自治基本条例と関係が深い次の条例は、関係や整合性を良く検討していく必要があります。
その他、自治基本条例で規定が想定できる条項として次のような事項があります。
もし自治基本条例を制定するのであれば、形だけでなく"生きた条例"にしていかなければなりません。"自分たちの"まちづくりをするための"自分たちの"条例としていくためには、時間をかけた策定過程が重要です。このプロジェクトチームでは、策定過程を工程表として示すとともに組織体制の確立を掲げました。また、策定に当たっての重要な検討課題として先の7つの項目を提言しました。
自治基本条例の検討通じて、どのようなまちにしたいのか地域全体で考えることが、よりよいまちづくりの実現に向けた一歩となると考えています。
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