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三芳町

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講評

朝倉はるみ先生(にほんの里100選「三富新田」再生PTアドバイザー)

朝倉先生

三富新田PTの研究員の皆さんを、まず労いたいと思います。みなさん、お忙しい中、かなりの時間をこのPTの提案に割いていただきました。本当にお疲れ様でした。
先ほどの発表に少しだけ補足をさせていただきたいと思います。
三富新田関係施策一覧( ※報告書参照 )を見ていただいてもわかるかと思いますが、これまでにも様々な施策が提案されているものの、なかなかうまくいっていないという現実があります。関心はあるけれども政策は実施できない。そこには何か問題があるのではないかという仮説を踏まえ、いろいろな議論を三富PTの中で行ってきました。どこをどのように守るのか、具体的な施策提案がこれまでできなかったのではないかという結論に達し、住民の方々を交えたワークショップの中でそれらについて次年度以降検討していきたいという提案にいたりました。
また、拠点整備については、研究期間中に上富拠点施設整備方針が町から出されました。三富PTでもこういった拠点が必要ではないかと考えていましたが、町から方針が出されましたので、この方針とも摺り合わせが必要となったのです。町から出された方針は、いろいろなものを盛り込みすぎていて、どっちつかずの施設になってしまうのではないかということも懸念されます。
こういった施設は、住民の為、それから外から来るお客様の為といった両方の利用者を想定することが多いのですが、結局どちらにも十分利用されないという事例を多く見ていますので、定期的に住民の方に使っていただく施設であることが、三芳町の場合には必要であろうと考えています。
こういった施設についても、住民の方を交え、本当に住民の方に必要な機能とはなんなのかということを整理していく必要があります。

三富新田は、ほとんどが私有地ですので、土地利用に関して行政から提案をしていくのはなかなか難しいかと思いますが、町の財産としてきちんと残していく。そのためにはどうすればいいかということを、住民の方を交えて考えていく姿勢が必要だと思います。

 

進士五十八先生(みどりの保全・活用PTアドバイザー)

進士先生

みどりに関する知識があまりない人で、ここまでやってきました。職員研修としては非常に効果があったのではないかと思います。異業種間交流ではないですが、税務課の人がいるから土地の地目別が細かく出たり、メンバーがそれぞれ現職で、また過去やっていたことが、上手に総合化されてくる。このテーマはとくにそういうものでした。
緑が大切だと全員がいうと、うまくいかないんです。みどりの保全と活用を抽象的に言えば、誰も異論はないんです。しかし、データで見るとおり、どんどん緑は減っている。これはどうしてかというと、緑というものを限定して、生物的自然とか緑化という技術論にしてしまったからなんです。大切なのは運動論で、町民上げて、町づくりでがんばろうという視点がないといけないんです。そういう意味では、ここではかなり細かいことまでやりました。
例えば、倉庫とか資材置き場とか、ああいうものに対してそれなりのことをやってもらおうと。お金のこともありますし、義務化のこともあります。それから、制度的なものまで。つまり、そういうものは、今までもあったのですが、それは、町民全体の合意形成がないとだめなんです。昔から日本人の共通の趣味は、祭りと緑や花だと言われています。そこを管理して、高いビジョンを掲げて、現実的な政策を出す。これが、このチームの狙いでした。非常に細かいところまで、費用負担や規制の内容とか出してくれましたし、推進本部のようなものがやはり必要なのですが、そういった協議会組織の話とかも出してくれました。私のお願いとしては、これを町長は早く実行してください、ということです。

今日、私はこういうバッジをつけてきました。これは、世界農業遺産のものです。ユネスコがやっているのは普通の文化遺産や歴史遺産。もうひとつFAO(国際連合食糧農業機関)のやっている世界農業遺産というのもがありまして、日本では佐渡と能登が登録されています。このバッジは能登を応援しているものです。能登や佐渡のスケールは確かに大きいのですが、三富新田というのは、世界農業遺産に十分匹敵するくらいの価値があると思っています。ところが、おそらく町民のみなさんは、ほとんどそう思っていない。「外からの評価」というのが三富新田の発表にありましたが、そのとおりで、にほんの里100選にしても新聞社がやっているだけで、なんとなく雰囲気があるだけで、法や制度の実務の中に入ってきていないんです。ですから、そこを本気で世界農業遺産を目指していこう、それだけの値打ちがあるんだ、と。例えば、それに参加して体を動かせば、ものすごくみんな元気になるんです。トラストでもやっています。病院に行く回数を減らして、雑木林に行く回数を増やせばいい。そうすると、医療費も軽減しますし、仲間もできて盛り上がります。町づくりというのは元気になること。緑というものを物として見ないで、そういう手段だと思っていただくのが良いと思います。
もう1つは、外への発信です。私は、観光という観点はものすごく大切だと思っています。普通の人から、観光は芸者を上げるというようなイメージが強すぎて、ばかされているところが多分にあります。しかし、観光という経済活動は非常に大きい。外から見られて評価されるということで、住民のプライドも高まり、一体感ができます。ぜひ、その辺も含めて三富新田や里地里山をテーマに、全体が一つになる、例えば、藤久保地区では、オープンガーデンのように自分の道を作るというような意識で町全体がよくなるということを進めていってほしいと思います。期待しています。

 

板谷和也先生(公共交通PTアドバイザー)

板谷先生

公共交通は3年のプロジェクトでやっていて、今2年目の終わりです。さて一つ皆さんに伺いたいのですが、この会場に公共交通でいらっしゃったという方はどれくらいいらっしゃいますか。
(手が挙がらない)
はい、0だと思います。こういう公共交通の便のよくないところで報告会を開催してしまうと、本当に公共交通を必要としている町民の方々が今回の報告を聞きたくても、来ることができないのではないかと思っていたのですが、残念ながら、おそらく実際にそうなっているようです。
私が公共交通に関する研究報告を一番聞いていただきたいのは、公共交通プロジェクトの成果を本当に必要としている町民の方々です。ですので、この場所でこのような(平日の午後)時間帯に報告会を行うことが妥当だったどうか、事務局の皆さんには今一度ご検討いただきたいと思っています。目的と施策が明確につながるようにするのが研究の役割ですので、来年度はこうした点についても配慮いただけますようお願いします。

三芳における公共交通の最大の論点は、公共交通のない地域が多いということです。そうした地域では、バス路線が成り立たないくらいに潜在的な利用者が少ないのです。一部ライフバスの路線がありますが、補助を出していない場合には、町が関与することは難しいです。そもそも公共交通の計画が存在せず、担当課も不在という「ないない」尽くしの状況ですので、どういったプロセスでこれから公共交通を充実させ、住みよく、移動しやすい三芳町を実現させるかを、少しずつ研究していただいています。
いま最も重要なのは、公共交通の計画を作ることです。公共交通の計画というのは、町としてどのような公共交通を作るかを示すもので、そこに示された公共交通があると町民の方々が便利に移動できる、といった指針・方針です。これを作るためには町民の方々がどのように交通行動をしているかを把握しなければならないのですが、町民の皆さんが、毎日どのように動かれているのか、どこに向かってどんな方法で動いているのかは、調査しないと分からないのです。また、現状では動きとして表れていないけれども、本当はここに行きたいというような移動ニーズもあるかもしれません。その理由は、公共交通がないとか自動車を運転することができないなど、いろいろあると思います。このようなことを把握する必要がありますので、今年度は、全町民の中からサンプルを抽出してアンケートをとっていただき、町民の皆さんの動きや要望を把握してもらいました。それ以外には、公共交通の計画を作るために必要な法制度や他地域の事例の把握といった勉強が必要ですので、こうしたこともまとめてもらいました。

3年目は、こうしたことを担っていける人材を育成し、議論する審議会を作って公共交通に関わる方々と話し合える場を提供するようにすることが必要と考えています。
公共交通を町主導で走らせるためにはお金が必要です。なぜかというと、どう頑張っても赤字になるからです。デマンド交通に対して強い希望がある方もいるようですが、デマンドは絶対に黒字になりません。ですので、新たに公共交通を導入するならば、町がいくらかでもお金を出すかどうかを決断しなくてはいけません。
それから、交通政策を担える人材が必要です。バス事業者さんはこれまでの事業の経験から、知識が豊富で事業のコツをよく知っていらっしゃいます。一方、役場の方はそうした積み上げが皆無といっていい状態です。ですから、ここ2年間はとにかく勉強していただき、現場でどんなことが起こっているか知っていただくということを中心にやってきました。こうした取り組みを通じて、町役場は今後、公共交通のコーディネーターにならなくてはなりません。公共交通の事業者に、「こういうことをやってください」と言わねばなりません。そして町民の方々に対して、「町の公共交通はこれでよいか」と尋ねて意見を収集しなければなりません。そのために必要なことを、来年度において提言していかなくてはならないのです。
今一度確認していただきたいのは、今は困っていないという人が相当数いたことです。実は、皆そんなに困っていないから、新たに公共交通が必要だという意見が大きな声になっていないという解釈もできます。実際に、町民の6~7割の方は移動についてほとんど困っていないようです。そういう中で財政支出をして、公共交通を新しく供給していく必要があるでしょうか。公共交通を入れることを前提として議論するのではなく、本当に必要なのかを議論していかなくてはいけないのではないかと思います。
それと先ほど申し上げましたが、デマンド交通は人に幻想を抱かせる部分があります。必要な時だけ動かせばいいから廉価で効率的である、と思われがちですが、そうではありません。実際には、利用がなく車両が動いていない時でも、運転手や車両を確保しておかなくてはいけません。
先ほど進士先生から、大学で路線バスを新しく運行させようとして路線バスの事業者と交渉した結果、大学が多額の拠出金を出さなくてはいけなかったということがあったと伺いました。新たに路線を開設しようとする際には1億円くらいのイニシャルコストが必要になる可能性もあり、それは三芳町でも同じです。意思決定の際にはそういう覚悟を決められるかどうかを議論していただかなくてはなりません。

公共交通プロジェクトは、特に役場の研究員の方々は本来業務がある中で、兼務でこんなに時間を割いてもらって大丈夫かと心配になるくらいに頑張ってもらいました。慣れない統計データを扱い、グラフを作り、分析をし、提言までたどり着かなければならないということで、かなりの負担だったのではないかと思います。各々のこうした努力があってはじめて、公共交通を実際に作ることができるのではないかと思います。一方で、各研究員の負担が過度になっていないかどうか、単に苦労しているだけで報われないという感じになっていないかどうかは今一度検討していただきたいと思います。研究所は楽しくて業務の向上に資する上、成果もついてくるので、みんなこぞって応募してくるというような組織になってほしいと思います。
また、市民研究員の方々もたいへん精力的に活動いただいています。町民側の視点なしに研究を進めると、行政側の論理だけで計画を作ってしまうということになりかねませんので、市民研究員の参画は欠かせません。
研究所に魅力を感じてもらい、新たに参画したいという方が多々現れるようになってほしいですね。そして報告会では一般の町民の方々から意見をいただき、それをこれからの研究につなげていくようになるべきです。研究所の皆さんには、来年度に向けてそういう努力をしていただきたいと思います。

 

 

 

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